意匠設計を手がける設計会社は、建物の外観や内装などのデザインを考える重要な役割を担っています。

一方で、実際に図面通りに建物を建てるのは施工会社の仕事です。

つまり、意匠設計の分野では、設計と施工という2つの専門分野に分かれて建築プロジェクトが進められるのが一般的なのです。

とはいえ設計会社の中には、意匠設計だけでなく構造設計や設備設計まで、建築に関わるあらゆる設計業務を一手に引き受ける 総合設計会社 もあります。

規模が大きく、資本力もあるこうした会社は、施工会社に対して強い交渉力を持つことができるのです。

そこで今回は、日本を代表する大手意匠設計会社5社の特徴をピックアップし、施工会社との違いについても詳しく解説していきたいと思います。

建築業界に興味のある方や、設計の仕事に就きたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

設計会社とは

設計会社の種類（組織系・アトリエ）

設計会社は、主に 組織系設計事務所 と アトリエ系建築設計事務所 の2種類に分けることができます。

組織系設計事務所は、比較的 大規模なプロジェクトを手がける企業 が多く、意匠設計だけでなく構造設計や設備設計など、 建築に関する幅広い業務を行います。

一方、アトリエ系建築設計事務所は、 建築家個人やそのチームによって運営 されることが多く、より デザイン性の高い建築物を手がける 傾向にあります。

プロジェクトの規模や予算、求められるクオリティなどによって、どちらのタイプの設計会社に依頼するかが変わってきます。

設計会社と施工会社の違い

設計会社と施工会社は、建築プロジェクトにおいて 異なる役割を担っています。

設計会社は、建物の デザインや図面作成を行う のに対し、施工会社は、その 図面をもとに実際に建物を建てる 役割を果たします。

つまり、設計会社は建物の コンセプトを具体化する 仕事であり、施工会社は、その 具体化されたプランを形にする 仕事だと言えるでしょう。

ただし、設計と施工が全く別の会社で行われるわけではありません。

大手の設計会社の中には、施工部門を社内に持っている ところもあります。

そうした会社では、設計と施工を一貫して行う ことで、コストや工期の面で優位性を発揮できるのです。

工事に関する見積もりの作成

設計会社が施工会社と大きく異なるのは、工事の見積もり作成 を行う点です。

設計会社は、建物のデザインや仕様を決定する際に、概算の工事費用を算出 します。

これは、クライアントに対して プロジェクトの予算規模を提示する ためにも必要な作業となります。

一方、施工会社が行う見積もりは、実際の工事に必要な費用を詳細に積算 したものです。

資材の数量や人件費、工期など、具体的な数字を積み上げて 算出するため、設計段階の概算とは異なる精度の高い見積もりが可能となります。

資材の発注や外注業者の手配

施工会社の重要な役割の一つに、工事に必要な資材の発注 があります。

施工会社は、設計図面をもとに 必要な資材の数量を算出 し、資材メーカーや商社に発注します。

また、工事の一部を 専門の業者に外注する 場合も、施工会社が外注先を手配します。

設計会社が関与するのは、仕上げ材など、デザイン上重要な資材の選定 までであり、実際の発注は施工会社が行うのが一般的です。

ただし、設計と施工を一貫して行う会社の場合は、設計部門と施工部門が連携 して、資材の選定から発注までを行うケースもあります。

現場の進行管理

工事の進行管理は、施工会社の最も重要な役割 の一つです。

工事の品質や安全性を確保しつつ、工期内に完成させる ためには、綿密な計画と的確な指示が欠かせません。

施工会社は、工程表を作成 して、工事の進捗を管理します。

また、現場で発生する 様々な問題に対応 しながら、工事を進めていくことが求められます。

一方、設計会社の役割は、設計図通りに工事が行われているかを確認する ことです。

設計事務所から 定期的に現場を訪れて 、施工状況をチェックします。

問題があれば、施工会社に 是正を求める こともあります。

このように、設計会社と施工会社は、互いに連携 しながら、プロジェクトを成功に導くのです。

完成後のメンテナンス

建物が完成した後も、施工会社の役割は続きます。

建物の引き渡し後、一定期間は 瑕疵担保責任 が発生するため、施工会社は 建物の不具合に対応 する必要があります。

また、長期的には 定期点検やメンテナンス も施工会社の重要な業務となります。

一方、設計会社が竣工後に関与するのは、クライアントからの要望によるデザインの変更 などに限られます。

基本的に、竣工をもって設計会社の仕事は終了 し、その後の建物の維持管理は、施工会社の役割となるのです。

ただし、設計事務所によっては、独自のアフターサービス を提供しているところもあります。

定期的な現場訪問やメンテナンス提案など、長期的な視点でサポート することで、クライアントとの信頼関係を築いているのです。

日本を代表する大手設計会社5社

株式会社日建設計

日建設計は、1900年に設立された歴史ある設計事務所 です。

住宅や商業施設、オフィスビルなど幅広い分野で実績 を持ち、国内だけでなく 海外でも数多くのプロジェクトを手がけています。

特に、超高層ビルの設計 では定評があり、日本で最初の超高層ビルである 霞が関ビルディング をはじめ、数々の高層ビルを手がけてきました。

また、環境に配慮した設計 にも力を入れており、省エネルギー技術や自然エネルギーの活用 など、持続可能な建築を追求しています。

日建設計は、設計だけでなく 都市計画や建築コンサルティング など、建築に関する トータルなサービスを提供 しているのが特徴です。

株式会社三菱地所設計

三菱地所設計は、三菱地所グループの一員 として、オフィスビルや商業施設、ホテルなどの設計を手がける会社です。

丸の内の再開発 をはじめとする、都市開発プロジェクトにも数多く携わっています。

また、海外での設計実績 も豊富で、アジアを中心に多くのプロジェクトを手がけています。

快適性と機能性を兼ね備えた空間づくり を得意としており、オフィスビルの設計では、執務環境の向上 に力を入れています。

三菱地所設計は、グループ会社との連携 を活かし、設計から施工、運営まで 一貫したサービスを提供 できることが強みです。

株式会社久米設計

久米設計は、1932年に設立された老舗の設計事務所 です。

創業者である久米権九郎は、日本における近代建築の先駆者 の一人として知られています。

久米設計は、公共施設や文化施設、学校など幅広い分野 で実績を持っています。

伝統と革新を融合させた設計 が特徴で、歴史的建造物の保存・再生にも取り組んでいます。

また、海外での設計活動 にも積極的で、アジアやヨーロッパ、アフリカなど、世界各地でプロジェクト を手がけています。

久米設計は、長年培ってきた経験と技術力 を活かし、クライアントのニーズに合わせた 最適な設計ソリューションを提供 しています。

株式会社日本設計

日本設計は、1963年に設立された総合設計事務所 です。

意匠設計、構造設計、設備設計など、建築に関する幅広い分野 でサービスを提供しています。

公共施設や商業施設、オフィスビル、病院など多岐にわたる実績 を持ち、国内外で高い評価を得ています。

日本設計は、最新のテクノロジーを積極的に取り入れた設計 を行うことで知られています。

BIMやVRなどのデジタル技術 を活用し、設計の効率化や品質向上に努めています。

また、サステナブルな建築 にも注力しており、環境負荷の低減 や 再生可能エネルギーの活用 など、地球環境に配慮した設計を推進しています。

日本設計は、技術力と創造力を融合 させることで、時代のニーズに合った 価値ある建築空間を生み出す ことを目指しています。

株式会社NTTファシリティーズ

NTTファシリティーズは、NTTグループの一員 として、通信施設や商業施設、オフィスビルなどの設計・施工 を手がける会社です。

通信技術に関する高い専門性 を持ち、情報通信に特化した施設づくりを得意としています。

また、建築設備の設計 にも定評があり、電気設備や空調設備、給排水設備など幅広い分野 で実績を持っています。

NTTファシリティーズは、設計だけでなく 施工や保守までワンストップで提供 できることが強みです。

グループ会社との連携 により、通信インフラから建物まで一貫したサービス を提供しています。

また、海外での事業展開 にも力を入れており、アジアを中心に 通信施設の設計・施工 を手がけています。

NTTファシリティーズは、通信技術と建築技術を融合 させることで、ICT時代に対応した最先端の施設づくり を推進しています。

設計会社の仕事内容

設計会社は、建築プロジェクトにおいて重要な役割を担っています。

その仕事内容は多岐にわたりますが、大きく分けると 調査フェーズ、設計フェーズ、設計監理フェーズ の3つに分類できます。

ここでは、それぞれのフェーズにおける設計会社の具体的な業務について詳しく解説していきましょう。

調査フェーズ

設計会社の仕事は、建築プロジェクトの初期段階から始まります。

まず行うのが、敷地の調査や分析 です。

設計会社は、建築予定地の立地条件や周辺環境、地盤の状況などを詳細に調査 します。

また、クライアントのニーズや要望をヒアリング し、建物の用途や規模、予算など、プロジェクトの基本条件を確認 します。

これらの調査結果をもとに、プロジェクトの方向性を定める基本計画を立案 します。

基本計画では、建物の配置やボリューム、動線、景観など、設計の大枠を決定 します。

この段階で、クライアントとの合意形成を図る ことが重要です。

設計会社は、イメージパースやスケッチ、模型などを用いて 、建物のイメージを具体的に提示します。

クライアントの理解を得ながら 、プロジェクトを前に進めていくのです。

設計フェーズ

設計業務

基本計画が固まったら、いよいよ 本格的な設計作業に入ります。

設計フェーズでは、建物の詳細な設計図書を作成 します。

この設計図書は、施工会社が建物を建てる際の指針 となる重要な書類です。

設計会社は、意匠設計、構造設計、設備設計など、各分野の専門家が協力 して設計図書を作成します。

意匠設計では、建物の外観や内装、材料、色彩などを決定 します。

構造設計では、建物の骨組みとなる構造体を設計 します。

設備設計では、電気や給排水、空調などの設備システムを設計 します。

これらの設計は、クライアントの要望に沿いながらも 、法規制や予算、工期などの制約条件 を考慮して進めていきます。

設計会社は、各分野の設計者間の調整を行い 、整合性のとれた設計図書を作成 していくのです。

設計監理フェーズ

監理業務

設計が完了し、いよいよ 工事が始まる と、設計会社の仕事は 監理業務に移ります。

監理業務とは、設計図書通りに工事が行われているかを確認し、品質を管理する 業務です。

設計会社は、定期的に現場に赴き、施工状況を確認 します。

問題があれば、施工会社に是正を求める など、設計意図の実現に向けて監理 を行います。

また、クライアントとの連絡窓口 となり、工事の進捗状況を報告 したり、変更要望への対応 を行ったりします。

工事中は、設計図書の変更が生じる ことも少なくありません。

設計会社は、変更箇所を適切に設計図書に反映 し、施工会社への指示を行う 必要があります。

監理業務は、建物の品質を左右する重要な役割 を担っているのです。

このように、設計会社の仕事は 調査から設計、監理まで、建築プロジェクトの全般にわたります。

各フェーズで求められる専門性や調整能力を発揮 し、クライアントの要望に応える建物を実現する ことが設計会社の使命なのです。

設計会社に向いている人の特徴

設計会社で働くには、専門的な知識やスキルが必要 とされます。

しかし、それだけでなく、設計会社の業務に適した資質や姿勢を持つこと も重要です。

ここでは、設計会社に向いている人の特徴を3つの観点から解説します。

建築士資格を活かしたい人

設計会社で働く上で、建築士資格は必須 と言っても過言ではありません。

建築士は、建築物の設計や工事監理を行うことができる国家資格 です。

設計会社では、一級建築士や二級建築士などの有資格者が中心となって業務を進めて います。

建築士資格を取得するには、専門的な知識と実務経験が必要 です。

資格取得のために 長期間の勉強や実務トレーニングを積んだ人 は、設計会社で その知識と経験を存分に活かす ことができるでしょう。

また、設計会社では、意匠設計、構造設計、設備設計など、専門分野ごとに資格が必要 とされる場合もあります。

専門分野の資格を持つ人 は、その分野でのキャリアアップが期待できます。

建築士資格を活かして、設計の専門家として活躍したい という人は、設計会社に向いていると言えるでしょう。

コミュニケーション能力が高い人

設計会社の業務では、コミュニケーション能力が非常に重要 です。

設計会社は、クライアントや施工会社、各分野の専門家など、様々な関係者と連携 しながら業務を進めていきます。

クライアントの要望を的確に把握し、それを設計に反映させる ためには、高いコミュニケーション能力が必要 不可欠です。

また、設計内容を施工会社に的確に伝え、工事の品質を管理する ためにも、円滑なコミュニケーションが欠かせません。

設計会社内でも、意匠設計、構造設計、設備設計など、各分野の設計者間の連携が重要 です。

専門分野の垣根を越えて、チームで設計を進めていく ためには、コミュニケーション能力の高さが求められます。

自分の意見を的確に伝えると同時に、相手の意見に耳を傾ける ことができる人は、設計会社で 能力を発揮できる でしょう。

設計会社は、コミュニケーション能力の高い人材を求めている のです。

海外でも活躍したい人

設計会社の中には、海外での設計業務に力を入れている ところもあります。

海外の建築プロジェクトに参加する ことで、グローバルな視野を身につけ、キャリアアップを図る ことができます。

海外プロジェクトでは、現地の文化や慣習、法規制などを理解し、設計に反映させる 必要があります。

また、現地のクライアントや施工会社とのコミュニケーションも欠かせません。

語学力はもちろん、異文化コミュニケーション能力が求められる でしょう。

グローバルに活躍したい、海外の建築に携わりたい という人は、設計会社への就職を検討してみてはいかがでしょうか。

設計会社の中には、海外プロジェクトに積極的に取り組み、人材育成に力を入れている ところもあります。

海外での経験を通じて、グローバルな感覚を身につけ、設計のプロフェッショナルとしてステップアップ できる可能性があります。

設計会社は、グローバルに活躍できる人材を求めている のです。

設計会社への就職・転職

未経験での転職の可能性

設計会社への就職・転職を考える際、「未経験でも可能なのか」という点が気になる 人も多いでしょう。

結論から言えば、設計会社への未経験就職・転職は非常にハードルが高い と言えます。

前述の通り、設計会社では 建築士資格を持つ人材が中心となって業務を進めて います。

また、設計業務には高度な専門性が求められる ため、即戦力となる人材が求められる 傾向にあります。

ただし、全く未経験でも就職・転職が不可能というわけではありません。

建築系の大学や専門学校を卒業した人 であれば、新卒採用で設計会社に就職する ことは可能です。

設計会社の中には、新卒者向けの研修制度を整えている ところもあります。

また、ゼネコンや施工会社、設備会社などで実務経験を積んだ人 であれば、その経験を活かして設計会社に転職する ことも可能です。

ただし、その場合でも 建築士資格の取得が求められる ことが多いでしょう。

設計会社への就職・転職を目指すなら、まずは建築士資格の取得を目指す ことが重要です。

資格取得のために 建築系の大学や専門学校へ進学する、または実務経験を積みながら資格取得を目指す などの方法があります。

専門的な知識と経験を積み、設計のプロフェッショナルを目指す ことが、設計会社への就職・転職の近道と言えるでしょう。

設計会社は、建築の専門家としてのキャリアを築きたい人を求めている のです。

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