建設業、なかでも足場業界に携わる事業主や従業員の皆さま、会社の利益率について関心はありませんか?
利益率は経営の健全性をはかる重要な指標です。
利益率が高ければ、売上から多くの利益を生み出せていることになります。
一方、利益率が低ければ、経営改善の余地があるとみなせるでしょう。
この記事では、足場屋の平均的な利益率の水準と、その計算方法について解説します。
さらに、利益率を高めるための具体的な方法にも触れていきたいと思います。
建設業界全体の利益率の動向についても、最後に概観します。
皆さまの会社の利益率は平均的な水準にあるのでしょうか。
それとも、改善の余地があるのでしょうか。
ぜひこの記事を参考に、自社の利益率について見つめ直してみてください。
きっと、経営の改善につながるヒントが見つかるはずです。
それでは、さっそく足場屋の利益率について見ていきましょう。
足場屋の利益率の平均はどのくらい?
足場屋の利益率を知るためには、まずはひと月あたりにかかる主な支出を把握することが大切です。
ここでは、小さな足場屋を例にとって、その支出内容を見ていきましょう。
ひと月あたりの主な支出
足場屋にとって、ひと月あたりの主な支出項目は以下の3つです。
- 人件費
- 交通費
- 材料費
これらについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
人件費
人件費は、従業員に支払う給与と、その社会保険料の会社負担分を合わせたものです。
従業員5人の小さな足場屋の場合、ひと月あたりの人件費は以下のように計算できます。
一般的な職人の月収:20万円
ベテラン職人の月収:30万円
一般職人3人、ベテラン職人2人とすると、
給与の合計=(20万円×3人)+(30万円×2人)=120万円社会保険料の会社負担分は給与の約15%なので、
会社負担分=120万円の15%=18万円したがって、ひと月あたりの人件費は、
120万円+18万円=138万円
交通費
交通費は、事務所から現場を行き来するために、トラックの燃料代などでかかる費用です。
2トントラックの燃料は軽油で、週1回フル給油するとして計算すると、ひと月あたり以下のようになります。
軽油の価格:140円/L
2トントラックの燃料タンク容量:70L
週1回フル給油する場合、
ひと月の燃料代=140円×70L×4週間=39,200円従業員5人の会社の場合、2台のトラックが必要とすると、
ひと月あたりの交通費=39,200円×2台=78,400円
材料費
材料費は、足場工事に必要な材料の調達にかかる費用のことです。
足場材を長期的に自社保有する場合と、レンタルする場合とでは、材料費の内容が大きく異なります。
レンタルの場合は、トラック1台分の材料で2〜2.5万円ほどです。
1ヶ月に25日稼働するとして計算すると、材料費は以下のようになります。
材料費(レンタルの場合)=2〜2.5万円×25日=50〜62.5万円
一方、自社保有の場合は、初期投資は必要ですが、材料費はほぼゼロに抑えられます。
材料の保管や、メンテナンスにかかる費用はある程度見込む必要がありますが、レンタルに比べれば材料費を大幅に抑えることができるでしょう。
利益の目安
以上の主な支出をふまえて、年商3,000万円の足場屋の利益を試算してみましょう。
1ヶ月の売上が250万円だとすると、先ほど計算した1ヶ月の必要経費の合計は以下の通りです。
人件費:138万円
交通費:78,400円
材料費(レンタルの場合):50〜62.5万円
合計:約2,083,400〜2,095,900円(=約208〜209万円)
したがって、売上250万円から、この必要経費を引いた額が、1ヶ月あたりの利益の目安となります。
250万円-208〜209万円=41〜42万円
この利益から、経営者の給与や設備投資の費用などを捻出していくことになります。
この試算では材料費をレンタルで計算しているため、材料を自社保有できれば、さらに利益を増やせる可能性があります。
年商3,000万円のケースで利益が1ヶ月41〜42万円ですから、利益率にすると約16〜17%といったところでしょうか。
利益をさらに伸ばすには、受注件数を増やして売上を伸ばしつつ、無駄な支出を抑えていくことが重要になります。
足場屋が利益率を高めるためにできること
前項で見たように、足場屋の平均的な利益率は16〜17%程度といわれています。
では、この利益率をさらに高めるためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
ここからは、利益率を高めるための原則について見ていきましょう。
仮設足場の資材は購入?リース?明確な支出計算が重要
足場屋にとって、仮設足場に必要な資材をどのように調達するかは、利益率に大きな影響を与えます。
資材の調達方法としては、主に「購入」と「リース」の2つがあり、一般的に、購入は初期投資が大きいものの、長期的に見れば利益率を高められる可能性があります。
一方、リースは初期投資を抑えられるメリットがある反面、ランニングコストがかさむデメリットがあります。
それぞれのケースについて、具体的に見ていきましょう。
「単管ブランケット」で1億円の売り上げを実現するケース
ある足場屋では、コンパネではなく単管と養生ネットを使った「単管ブランケット」という独自の工法を採用することで、年間1億円の売り上げを実現しています。
単管ブランケットの材料費は、1現場あたり数十万円程度。
これを自社で保有することで、1現場あたりの粗利益率を80%以上に高めているそうです。
「楔足場」の場合
一方、「楔足場」と呼ばれる工法では、材料のほとんどをレンタルでまかなうのが一般的です。
楔足場の部材は1セットが数百万円もするため、すべてを購入すると初期投資が数千万円単位になってしまうからです。
このように、工法によって適した資材の調達方法は異なります。
自社の状況にあわせて、メリットとデメリットを十分に比較検討し、適切な調達方法を選ぶことが重要です。
優秀な従業員、仲間を見つけることが必須
利益率を高めるためには、優秀な従業員、仲間を見つけることが欠かせません。
足場の組立や解体は、高所での危険を伴う重労働。
ベテランの職人は、安全かつ効率的に作業を進められるだけでなく、若手の指導もできるため、貴重な戦力となります。
優秀な人材を確保するためには、働きやすい環境を整えることが大切です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 十分な安全対策を講じる
- 残業を減らし、休日をしっかり取れるようにする
- 資格取得支援など、スキルアップの機会を提供する
- 頑張りを正当に評価し、給与に反映させる
「働きやすい」「スキルが身につく」と評判になれば、優秀な人材が集まりやすくなるはずです。
人件費はコストではなく、投資だと考えましょう。
優秀な従業員、仲間とともに働くことができれば、利益率を高められるだけでなく、仕事にもやりがいを感じられるようになるでしょう。
遠隔監視システムの導入で人件費を削減
遠隔監視システムを導入することで、人件費を大幅に削減できる可能性があるのをご存知でしょうか?
遠隔監視システムとは、インターネットを通じて現場の状況をリアルタイムで確認できるシステムのことです。
カメラやセンサーを現場に設置し、そこから送られてくる情報を事務所のパソコンなどで監視します。
これにより、現場に人を派遣しなくても、現場の状況を把握できるようになります。
現場見守る君の活用事例
「現場見守る君」は、建設現場向けに開発された代表的な遠隔監視システムです。
「現場見守る君」の活用事例を見ていきましょう。
- 雨、災害時の現場チェック
- 大雨や強風の際、現場の様子が心配になることはありませんか?「現場見守る君」なら、現場に行かなくても状況を確認できます。もし異常があれば、すぐに対応を指示できます。
- 夜間の防犯
- 夜間、現場に人がいないと、資材の盗難などが心配です。「現場見守る君」を導入すれば、不審者の侵入を感知してアラートを発信してくれます。
- 長期休暇の防犯
- ゴールデンウィークや年末年始など、長期休暇中は現場が無人になりがちです。「現場見守る君」があれば、休暇中も現場の安全を確保できます。
- 進捗の確認、工程の管理
- 現場の進捗状況を、リアルタイムで確認できます。工程の管理に役立つだけでなく、クライアントへの報告にも使えるでしょう。
- 5Sの徹底、工事マナーの順守
- 「現場見守る君」で現場の様子を記録することで、5S(整理/整頓/清掃/清潔/しつけ)が徹底されているか、工事マナーが順守されているかをチェックできます。従業員の意識向上にもつながります。
このように、遠隔監視システムは、さまざまな場面で活用できるメリットがあります。
現場に管理者を常駐させる必要がなくなるため、人件費の削減効果は大きいといえるでしょう。
ただし、カメラなどの設置には初期コストがかかります。
費用対効果を見極めつつ、自社に合ったシステムを導入することが肝心です。
遠隔監視システムを活用して、効率化とコスト削減を実現してみてはいかがでしょうか。
ご興味を持たれました方はこちらよりご連絡ください。
建設業全般での利益率の計算方法と推移
ここまで、足場屋に特化した利益率について見てきました。
しかし、建設業全般でも利益率は重要な指標として扱われています。
そこで、建設業全体の利益率の計算方法と、その推移について解説しましょう。
建設業の利益率の種類
建設業の利益率には、主に以下の5種類があります。
- 売上高総利益率(粗利益率)
- 売上高営業利益率
- 売上高経常利益率
- 自己資本経常利益率(ROE)
- 総資本経常利益率(ROA)
それぞれの利益率について、詳しく見ていきましょう。
売上高総利益率(粗利益率)
売上高総利益率は、売上高に占める粗利益の割合を示す指標です。
粗利益とは、売上高から売上原価(工事原価)を引いたものを指します。
計算式は以下の通りです。
売上高総利益率(粗利益率)= 粗利益 ÷ 売上高 × 100
国土交通省の調査によると、2020年度の建設業全体の売上高総利益率は、平均25.41%でした。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合を表します。
営業利益とは、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を控除したものです。
計算式は以下の通りです。
売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
財務省の法人企業統計によると、2020年度の建設業の売上高営業利益率は、平均4.3%でした。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を示します。
経常利益とは、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を控除したものです。
計算式は以下の通りです。
売上高経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100
国交省の調査では、2020年度の建設業全体の売上高経常利益率は、平均3.66%でした。
一方、法人企業統計では、平均5.2%という結果が出ています。
自己資本経常利益率(ROE)
自己資本経常利益率(ROE)は、自己資本に対する当期純利益の割合を表します。
自己資本とは、会社の資本金や利益剰余金など、返済義務のない資本のことです。
計算式は以下の通りです。
自己資本経常利益率(ROE)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
国交省の調査によると、2020年度の建設業全体の自己資本経常利益率は、平均15.22%でした。
法人企業統計では、平均14.3%となっています。
総資本経常利益率(ROA)
総資本経常利益率(ROA)は、総資本に対する経常利益の割合を示します。
総資本とは、自己資本と他人資本(借入金など)を合わせたものです。
計算式は以下の通りです。
総資本経常利益率(ROA)= 経常利益 ÷ 総資本 × 100
国交省の調査では、2020年度の建設業全体の総資本経常利益率は、平均5.67%でした。
一方、法人企業統計では、平均6.1%という数字が出ています。
経営規模ごとの収益率の推移
建設業の利益率は、経営規模によって傾向が異なることが知られています。
国交省の資料によると、小規模企業ほど売上高総利益率(粗利益率)が高い一方、営業利益率が低くなっています。
これは、大企業と比べて、小規模企業の販管費の割合が高いことを示唆しています。
一方、大企業は総利益率は低いものの、営業利益率は高い傾向があります。
規模の大小を問わず、ここ数年は建設業の利益率は改善傾向にあるようです。
建設業界全体の動向を見据えつつ、自社の利益率の改善に取り組んでいきたいものですね。
まとめ
いかがでしたか。
この記事では、足場屋の利益率の実態と、その改善方法について詳しく解説してきました。
足場屋の平均的な利益率は、16〜17%程度と言われています。
この数字を高めるには、仮設足場の資材調達方法を工夫したり、優秀な人材を確保したりすることが大切です。
また、遠隔監視システム「現場見守る君」の導入で、人件費を削減することも一案です。
「現場見守る君」は、雨や災害時の現場チェックをはじめ、夜間・長期休暇中の防犯、進捗の確認、5Sの徹底など、さまざまな場面で活躍してくれます。
ぜひ一度、導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
ご興味を持たれました方はこちらよりご連絡ください。
建設業界全体の利益率は、近年改善傾向にあります。
しかし、経営規模によって傾向に違いがあることも分かってきました。
自社の規模や特性に合わせて、利益率を高める戦略を立てることが重要と言えるでしょう。
利益率は、会社の経営状態を示す大切な指標です。
この記事が、皆さまの会社の利益率改善の一助となれば幸いです。